【キャリル・マクブライド著 江口泰子訳】 「毒になる母」 自己愛マザーに苦しむ子供



毒になる母 自己愛マザーに苦しむ子供 (講談社+α文庫)」読了。

自己愛マザー、すなわち自分のことに夢中で、共感と愛情を示すことができない母親と、そんな母親に育てられた子供の苦しみと、自己愛マザーからの脱却プログラムについて詳細に書かれています。

NHK「あさいち」で時々特集される、母娘トラブルなどは、本書が原典になっているようですね。


毒になる母 自己愛マザーに苦しむ子供 (講談社+α文庫)
by カエレバ


著者は、自身も自己愛マザーに育てられた米国公認心理療法士。

自己愛の強い親に育てられた子供たちの調査・研究を行っていて、その経験も本書には書かれています。

自己愛の強い母親とは、どんな特徴を持っているのでしょうか。

本書には様々な角度から自己愛マザーを知る手がかりがあります。
たとえば、母親の自己愛度を知るこんなチェックリスト。
  1. あなたの重要な問題について話し合うとき、母親が自分の話題に換えようとする。
  2. 母親があなたに嫉妬するような行動をとる。
  3. 母親が娘のあなたを愛してくれているのか、何度も疑問に思ったことがある。
  4. 母親が人目(家族、友人、同僚、世間など)をひどく気にする
  5. 母親はすぐに傷つく。問題を解決しようとせず、長いあいだ恨み続ける。
  6. 母親があなたに対して批判的だ。
  7. 母親は、本当のあなたを知らないと思う。
  8. 母親がどこかウソっぽく感じられる。
  9. 幼いころから、母親の情緒的な欲求を満たさなければならないと感じてきた。
  10. 母親があなたと張り合う
このようなリストが、33もあり、まだまだ続きます。


どうして自己愛マザーはこのような態度になってしまうのでしょうか?

ダイヤモンド・オンラインにこんな記事がありました。
「人の心の中にはインナーチャイルドがいます。子どもの頃に理不尽な目に遭った人は、その小さな子どもが悲しんでいたり怒っていたりする状態です。そうすると、自分の子どもが生まれたときに、インナーチャイルドと子どもが『ライバル関係』になってしまうのです。子どもが幸せそうにしていると、インナーチャイルドがそれを阻止しようとする。自分が満たされなかったのに、なぜこの子どもが幸せなのかと憎むのです。親が子どもに『お前のためだから』と言って子どもの意志に反することを強要したりすることがありますが、これも本当は、子どもに幸せになってほしくないからです」
「毒親」のDNAはあなたにも?その愛情が子どもを凍りつかせる
http://diamond.jp/articles/-/80433?page=4

本書のなかでも、インナーチャイルドについて書かれていました。


そして、著者は、自己愛マザーの10本の毒針、を紹介します。

毒針1
母親の愛情や注目、承認を得ようとどれほど努力しても、母親を喜ばせられない。

毒針2
あなたがどう思い、どう感じるかより、穴tが母親にどう見えるかが重要だ。

毒針3
娘に嫉妬する。

毒針4
娘が健全な方法で自己を表現することを良く思わない。それが母親自身の欲求と相容れないか、母親の立場や存在を脅かすときに、その傾向が強くなる。

毒針5
いつも母親のことばかりだ。

毒針6
人に共感できない。

毒針7
自分の感情に向き合えない。

毒針8
批判的で手厳しい判断をくだす。

毒針9
あなたを娘ではなく友達のように扱う。

毒針10
娘との間に境界線がなく、プライバシーもない。



自己愛マザーが娘に対して批判的なのは、もろい自我のせい、と断じる著者も、自己愛マザーの呪縛に長い間苦しんだため、これらの毒針の解説はとても明瞭です。

自己愛の強い母親は、早いうちから子供を大人の世界に引きずり込む。
これって、夫の悪口を子どもに聞かせている母親、ですよね。



このような自己愛マザーから、娘はどちらかの両極端な方法で育てられる。

ひとつは過保護(娘を飲み込む母親)、もう一つは間違った放任主義(娘を無視する母親)


過保護の場合、母親は自分の望む娘の姿をメッセージしつづけ、無視する母親は「あなたは見えない=重要ではない」というメッセージを娘に発するのだという。

過保護な、娘を飲み込む母親はイメージがしやすいです。
よく話題になりますし、教育上、過保護は良くない、という認識があるためです。


一方の、娘を無視する母親はどうでしょう。

無視しているからといって何もしないわけではないようです。
たとえば著者は、「住む場所や着る服、食べ物も与えてやったのに、まだなにが不満なの?」と母親から言われています。

このような言葉を、私は学生から間接的に聞いています。
愛情以外は与えた、しかし愛情を十分に与えないという、無視する母親は、案外身近に存在するのかもしれません。


こんな自己愛マザーの娘は、がんばりすぎる娘か、自己破壊する娘の両極端な人生を送りやすいと、著者は指摘しています。

母親に愛された記憶がない娘たちは、母親の愛情を求め続ける漂流者のようです。
恋愛も、母親との関係を模倣したものに陥り、依存関係、共依存関係に陥るそうです。

依存関係を結ぶ娘とは、自己愛マザーがもたらした心の空白やむなしさを恋愛相手に埋めてもらおうとする。相手は母親代わりとなって、その役柄を演じる。
彼は、あなたの圧倒的な要求や嫉妬に息がつまりそうになる。あなたは四六時中、彼にそばにいてもらい、すべての欲求に、とりわけ情緒面の欲求にこたえてほしい。だが、それがかなわないとわかると、あなたは、かつての母親と同じように腹を立てる。彼は困惑し、苛立つ。あなたは過去の自己愛マザーとの関係を、今度はあなたが母親役を演じて再現し、子供のころに味わった失望と虚しさを再び味わう。
共依存関係はこうだ。
あなたに依存する男はあなたを見捨てない。あなたは相手の面倒を見るかわりに、虚しさや喪失感を埋めてもらおうとする。だがもちろん、そうはいかない。相手が理不尽な要求をし、依頼心が強く、未熟であればあるほど、あなたは母親を思い出す。
あなたは、相手のことも、彼が親密な関係を築く能力も信じていない。なぜなら、彼には自分の弱さに立ち向かう能力も、あなたの心を満たす能力もないからこそ、あなたは彼を選んだのだ。自分を認めてほしいという欲求も、純粋で愛情ある関係を結びたいという願いも、あなた自らが壊していたのだ。

本書は、自己愛マザーとその娘の関係についてつまびらかにしているだけでなく、成長した娘たちの不幸が、母親との関係に由来していることも明らかにしています。

もし、あなたが、いつも同じタイプの男性を好きになり、いつも同じような破局を迎えているとしたら、それは自己愛マザーの影響かも知れません。

恋愛に悩み、生き方に悩む女性におすすめします。


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